有限会社タクナは、新発田市にある漬物メーカー。1日1000パック以上、機械に頼らず、ほとんどの工程を手作りしています。
掲げるコンセプトは「食卓が笑顔になる、惣菜風おかず漬物」。塩分を控えめにし、やさしい甘口に仕上げているのが特徴です。「もう一品おかずが欲しい」といった時の助っ人のような存在として人気を集めています。
新潟直送計画では、国産の野沢菜や昆布を醤油漬けにした「野沢菜昆布」、昆布の粘りと大根のパリパリ食感が美味しい「割干松前」など、6種類を出品していただいています。
今回は、そんなタクナの漬物のパッケージデザインをサポートさせていただきました。デザイン依頼のきっかけやリニューアル後の反響について伺います。
有限会社タクナ 専務 近藤卓 様
新発田市出身。もともと県外の自動車メーカーの整備士をしていたが、長年漬物業界に携わっていた父が独立するタイミングでUターン。県内の食品会社で修業をした後、家業に入った。「笑顔のある食卓」をモットーに、親子で漬物の製造・販売に取り組んでいる。「漬物好きの家族なので、プライベートでもよく食べています」と、近藤さん。中でもカット野菜と一緒に食べる食べ方が好きだとか。「野菜スティック感覚ですよね。味変ができて楽しいんです」と笑う。
担当スタッフ
■デザイナー:大津裕子
■アカウントプランナー:水澤純
通販サイトは初の試み。抵抗や不安よりも、新しいお客さんに出会えることに期待して出店しました
ー 新潟直送計画への出店や、デザイン依頼の経緯を教えてください
水澤(プランナー):最初は近藤さんからお問い合わせいただきましたよね。2021年でした。
近藤(タクナ):ちょうどコロナ禍で、卸会社の取り引きが減ってきた時期だったんです。その頃、同じく漬物メーカーの「きよさと」様とお話する機会がありました。先に新潟直送計画に出店されていて、紹介してくださったんですよね。「タクナさんの漬物は惣菜風だし、食卓の一品に売れると思うよ」って。それがきっかけです。
水澤:通販サイトは初めてでしたよね。出店に抵抗はなかったですか?
近藤:抵抗はありませんでした。新しいお客さんに出会えそう!という、わくわく感の方が大きかったです。それまでは県外の市場との取り引きが多かったんですよ。でも新潟直送計画に出店すると、一般のお客さんと繋がれますよね。今までにない販路開拓になるんじゃないかと思いました。
水澤:単純に減ってしまった販路を埋めるだけではなく、新しい客層を取り込むためにも出店を決めたわけですね。
近藤:そうですね。そして、そのタイミングでパッケージも一新したいと思って、水澤さんにご相談しました。
水澤:ありがとうございます。でも、パッケージはすでにありましたよね。
近藤:はい。ただ、従来のものは「ザ・漬物」といったご年配向けのデザインなんです。それは既存の卸先用に今後も使い続けていくのですが、せっかく新しい顧客作りをするのであれば、全く違うパッケージを作りたいと思いました。
あえて「朝ご飯」に特化した、爽やかなデザイン。漬物の可能性を感じます
ー パッケージが決定するまでのエピソードを教えてください
大津(デザイナー):新しい顧客作りをするためには、若者に目を向けた方が良いと思いました。最近は若者の和食離れが叫ばれていますからね。
近藤:そうそう。朝食にご飯を食べる人も少なくなってきたみたいですし。私自身もそうなのですが、漬物ってどうしてもお年寄りが食べるイメージが強いですよね。それ自体が悪いわけではないのですが、パッケージを作るなら、若い層にも手にとっていただけるようなデザインにしたいと思いました。そして、朝からご飯と一緒に漬物を食べてほしい!という願いも込めて(笑)
大津:近藤さんが「朝ご飯に食べてほしい」とおっしゃっているのを聞いた時に、英語の「breakfast(ブレックファースト)」が頭に浮かびました。そこで由来を調べてみたら、「fast」って「速い」以外にも「断食」という意味もあったんです。「break」は「壊す」ですよね。つまり、「夕飯を食べた後、長い断食時間を破って食べ物を口にする」から、「breakfast」と呼ばれるようになったそうです。そう考えると、インパクトのある言葉ですよね。
水澤:そのインパクトをパッケージに表現したわけですね!
大津:そうなんです。「さぁ、朝ご飯を食べるぞ!」という「わんぱく感」と、朝から漬物を食べたくなるような「爽やかさ」を意識しました。
水澤:あえて「朝ご飯」に特化したわけですね。
近藤:その発想はなかったです。逆に漬物の可能性を感じさせますよね。最初見た時は本当にビックリしましたよ。「なんだコレ!?」って(笑)賑やかさを感じさせつつも洗練された印象で、見事に漬物の概念を覆してくれました。
水澤:一般的な漬物にはあまりない仕上がり。透明なので、中身がよく見えますよね。
大津:今回改めて、「漬物って色とりどりでカラフルだなぁ」と気づいたんですよ。パッケージをシンプルに白一色かつ透明シールにすることで、その色味を活かしています。
近藤:うちの家族も「きれい!」と驚いていました。あと、イラストが細かいんですよ。中の漬物に合わせて、大根やスルメが描かれています。面白いパッケージですね。
自家用のみならず、手土産にも人気。新しい客層が増えた上に、用途の幅も広がりました
ー デザインを一新して反響はありましたか?
近藤:問屋さんから「どうしたの!?」って大きなリアクションをもらいました(笑)面白がってくれましたね。
水澤:新潟直送計画のレビューもたくさん書き込まれていますよ。 「パッケージもオシャレだったので近所の人にお裾分けしやすかったです」と、コメントしてくださっている方もいます。
近藤:お裾分けは予想外でした!漬物ってだいたい自家用に買いますよね。用途の幅が広がったのは嬉しいです。
水澤:産直セレクトショップ「KITAMAE」でも好評です!それこそ、若いお客さんが手にしている光景を見ますよ。
近藤:ありがとうございます。KITAMAEは、お子様連れからカップル、お年寄りまで、客層がさまざまですよね。まさに既存の客層にはないお客さんが生まれていると思います。KITAMAEから受ける発注数は、既存パッケージでほかのスーパーで売っていた頃に比べて3倍くらいですね。
水澤:へー。すごいですね!
近藤:スーパーの漬物売り場って、いろいろなメーカーのものがあるじゃないですか。しかも購入する頻度もそんなに高い商品ではないんですよ。
水澤:家族だったら週1回、核家族や1人暮らしだったら、月に2回とかですよね。
近藤:その中から選んでもらうわけですから、すごい競争率なんです。やはりパッケージは大事だなと思いました。あと、KITAMAEに置いていただいたおかげで、道の駅からも問い合わせがありました。「買って食べてみたら美味しかったので、うちにも置かせてください」って。
水澤:漬物に馴染みがない若い世代を取り込んだ上に、用途の幅も販路も広がった!サポートさせていただいた私たちも嬉しいです。
近藤:本当にありがとうございます。新しいパッケージの漬物を、もっといろいろなお店で販売したいです。何か良いお店があったら教えてください!(笑)
水澤:もちろんです!これからもよろしくお願いいたします。