新潟市江南区大江山で、昔ながらの農法「土耕栽培」にこだわり、「越後姫」を栽培しているSHOKURO。新潟直送計画への出店をきっかけに、クーネルワークで、ロゴデザインやリーフレット、パッケージなど、販促物一式のデザインを担当させていただきました。
デザインを制作していく過程での手ごたえや想いを、SHOKUROの代表 山倉慎二さんに伺いました。
SHOKURO代表 山倉慎二 様
父から経営を引き継ぎ、「SHOKURO」の代表となった山倉さん。ダンスとイラストを得意とし、Podcast(インターネットラジオ)のパーソナリティーとして活動するなど、実に多彩な才能を持つ。
就農したのは10年ほど前だが、越後姫作りに本格的に向き合い始めたのは数年前、父の熱い想いに触れたことがきっかけだった。それまでは、クリエイティブなことが好きでその才能とエネルギーを農業以外の事に向けていたが、「父が丹精込めて作ってきた越後姫を、もっとたくさんの人に知ってほしい、食べてほしい」と思うようになり、父の越後姫を自身のイラストを使ってブランディングすることや、得意のSNSやPodcastを利用した情報発信などに力を入れてきた。
当初は「お手伝い感覚」だったという農作業にも積極的に関わり、エンターテイメントとの融合で進化させていきたいと意気込む。
担当スタッフ
■デザイナー:星山充子
■アカウントプランナー:鈴木沙耶
ターゲットである若い女性に販売するにはミスマッチだった包装資材。
ー 依頼のきっかけは?
山倉(SHOKURO代表):ちょうど父から経営を引き継ぎ、今後の経営方針について考えているタイミングでお声がけを頂き、2020年に「新潟直送計画」に出店を決めました。新潟の「越後姫」を全国のたくさんの方に知ってもらいたいと思っていたので、インターネット通販には興味を持っていました。
鈴木(アカウントプランナー):元々、山倉さんのことはInstagramを通じて一方的に知っており、なんだか面白そうな人だな、いつかお会いしてみたいなと思っていました。その願いが通じ、ある方のご紹介でお会いすることとなり、新潟直送計画への出店のご案内をさせていただきました。農園の屋号を改名するタイミングであることを伺い、農園らしさ・オリジナリティを形にするロゴ、パッケージなどの総合的なデザインに取り組み、ネット通販を起点に、ブランディングにも力を入れていきましょうとご提案しました。
山倉:もともと「山倉ファーム」という名前でしたが、実は隣の家もイチゴを作っている山倉さんで、間違われることも多く、今後の事業展開も見据えてこのタイミングで屋号を「SHOKURO」に統一したんです。これまでは、イチゴのイラストが大きく描かれたJAの出荷箱を使っていたのですが、「20代~40代前半のおしゃれなものに感度が高い女性」という、僕がターゲットとしているお客様にはマッチしていないのではと懸念していたので、いい機会でしたね。
ロゴデザインは、農園の姿勢そのもの。経営理念を的確に表現し、顧客へ伝えるためのコミュニケーションを形に。
ー どのように案件を進行しましたか?
星山(デザイナー):山倉さんとの初めてのお打ち合わせは、とても印象に残っています。「農園のビジョン、どれがいいと思います?」とワクワクに溢れた表情で、どれも捨てがたい素敵なフレーズとストーリーをたくさん聞かせていただきました。
山倉:ただ、美味しい農作物を作る、ということだけではなく、食べる人が農作物に愛着を持てたり、農園のファンになってくれる仕掛けづくりが大切だと考えていました。作り手にとってのやりがいはそこにあるのではないか、確かな技術と楽しい情報発信で食べる人の幸せに寄り添う農園になりたいという想いから、「農業にエンターテイメントを」という経営理念にたどり着きました。
星山:山倉さんの経営理念に込めた想いが素晴らしかったので、私たちが今回やるべきことは、山倉さんが描いた世界観をしっかりとキャッチし、ビジュアルデザインの温度感を経営理念に狂いなくピタリと合わせていくことでした。経営理念に紐づく様々な要素を、5案のロゴデザインに落とし込んで提案しました。普段5案も作ることはめったにないのですが、山倉さんの想いに触れたら、デザイン案がどんどん浮かんできました。山倉さんの考える「エンターテイメント」の強さを、デザイン案を作りながら感じましたね。
山倉:僕は趣味でイラストを描いているので、それを生かしたシンプルで可愛いデザインを希望していました。提案していただいた5案の中で、メガホンをモチーフにしているデザインを見た瞬間、一発で採用を決めました。情報を発信することが大好きな僕のスタイルに合致するもので、「農業にエンターテイメントを」という理念を見事に汲み取ってもらいました。
星山:最終的に選んでいただいたのは、一番フレキシブルに使用できるデザインで、アイディアを広げていける山倉さんだからこそ使いこなせるロゴデザインができあがったなと感じています。
提案された瞬間、テンションが上がりましたね。額縁に入れたいくらい気に入っています!
ー 制作時にこだわったポイントは?
星山:ロゴデザインのイメージに合わせ、パッケージ・包装紙・リーフレットを一貫したデザインで統一し、ブランドのトーンを整えていきました。制作にあたり一番心がけたことは、グラフィックデザインの存在感を徹底的に消すことです。山倉さんがご自身で描かれた素敵なイラストがSHOKUROの世界観をつくり出しており、意匠をつけ足してしまうとイラストの存在感を邪魔してしまう。書体の選定、文字間や行間の読みやすさ、情報導線の分かりやすさに注力し、イラストを「主役」にする、「土台」のデザインを心がけました。
山倉:リーフレットは、ビジョンを載せること、シンプルで分かりやすいこと、手に取った人にワクワクしてもらえるように僕が描いた漫画を載せることをオーダーしました。新潟直送計画の商品紹介ページと文章のトーンを合わせてライティングもしてくださり、僕の想いを分かりやすく、本当にセンスよくまとめてもらいました。
山倉:化粧箱は、イチゴの赤が映えるよう、敢えて白と黒の二色のシンプルなデザインにしてもらいました。うちはイチゴ以外に米も作っているので、今後はギフト用にこの箱に米を入れて贈る打ち出し方も検討しています。
鈴木:箱の設計や紙厚、印刷方法についても検討を重ね、のりしろが表に見えないすっきりとした形状になりました。当初、包装紙を作るご依頼はありませんでしたが、箱の仕上がりを見た山倉さんから「この箱に発送伝票を貼るのはもったいない、お客さんの発想で自由に二次利用してほしい」と言っていただき、包装紙の作成をご提案しました。この包装紙は、通販用に箱を包むだけでなく、イベントや売り場などで野菜をぐるりと包むこともでき、SHOKUROの愉快な雰囲気をより楽しく演出できるな、と考えました。
山倉:この包装紙、超いいですよね!?(笑)箱のデザインが素晴らしいので、この箱は二次利用してもらいたくて、そのために宅急便のシールを直接貼らなくて済むよう、箱を包む用に作りました。イラストは僕が祖母・両親・僕・猫を描いて、星山さんが大きめのドット状にして総柄に仕上げてくれました。提案された瞬間、テンションが上がりましたね。
この包装紙にも発送伝票を貼りたくなくなって、今はさらにラップで包んで発送しています(笑)。額縁に入れたいくらい気に入っています!
お客様からのダイレクトな反響に、仕事へのモチベーションもアップ。
ー 実際の反響はいかがですか?
山倉:デザインを依頼して、率直に、「あぁ、作って良かった。お客さんに喜んでもらえているな。」と感じています。実際に「箱が可愛いから」と新潟直送計画を通じて注文を頂いたり、インスタのメッセージやタグ付の投稿で「贈り先にとても喜んでもらえました」「可愛かったです」とコメントをいただくこともあります。何よりも僕が一番嬉しいし、モチベーションに繋がっています。このデザインは新潟の農家の中で絶対負けないと思っているし、農家はもっとこういうことに取り組んでいくべきです。こうしたツールを揃えることは、特にネット通販の世界ではとても大事だと思います。
星山:印刷が仕上がって納品した時の、「これ、優勝ですね!」という山倉さんの笑顔がとても嬉しかったです。密にコミュニケーションをとりながら対等な目線でデザインに取り組めたことが、完成度に繋がったと思います。
鈴木:山倉さんとは、何度も何度も打ち合わせを重ねて、お互いにアイデアを出し合いながら本当に自由に、楽しく、一緒になってデザインを作っていくことができました。トータルでプランニングさせていただいたので時間がかかりましたが、なんとか越後姫の販売の最盛期に間に合わせることができ、2020年5月現在、SHOKUROは「新潟直送計画」の99商品ある果物部門でランキングトップになりました!タイミングやメディア露出の関係もあるかと思いますが、新規出店でここまで結果を取れることはなかなかありません。販売・販促ツールもその一助になっていたら嬉しいです。
結果が出るスピードの早さは想像以上。長期的な視野に立った成長を目指す。
ー 今後の展望はありますか?
山倉:このツールを最大限使いながら、でも同じことを繰り返しても飽きられると思うので、次年度はオリジナルの塗り絵を封入したり、DMを発送したり、新規のお客さんもリピーターの方もワクワクしていく仕掛けを用意していきたいですね。
星山:デザインは作って終わり、では成長しないので、新潟直送計画でのお客様のレビューなども考慮しながら、ブランドを育てていくサポートをしていきたいです。また、フットワークが軽くたくさんのアイディアをお持ちの山倉さんだからこそ、今回作成した包装紙のように、使い方を拡張していけるツールがもっとあるのではないかと思っています。今回はいちごのパッケージ制作でしたが、他に作られているお野菜たちの魅力も伝えられるようなデザインの提案ができたらいいなと思っています。
鈴木:コロナ禍の中で、県内でも通販への取り組みが急速に進んでいます。「新潟直送計画」もメディアなどで取り上げていただく機会が増えていますが、出店者の皆様からの期待や、サービスとしての存在価値自体が、大きく高まっていることを感じています。私達自身もサービス価値の向上に取り組みながら、山倉さんをはじめ、各出店店舗様のブランディングやマーケティングの支援も、二人三脚で取り組んでいきます。
山倉:ロゴデザイン・ツールの制作にあたり、もちろん費用はかかりましたが、最初に鈴木さんと10年計画で考えていこうと話していて、初年度はこれらを作ることが目標でした。このツールを使ってどんどん知名度を上げていって、3年後くらいには売れるようになることを期待していましたが、初年度から想像以上に売り上げができて驚いています。毎年春になるとSHOKUROのイチゴを食べるんだと全国の人が思ってくれることを夢見て、SHOKUROブランドを育てていきます。
新潟直送計画を活用して、みんなで一緒に有名に。
ー 今後「新潟直送計画」をどのように活用していきたいと思いますか?
山倉:しっかりと取材をして、商品の魅力や個性を最大限に表現した店舗ページを作ってくれるので、「新潟直送計画」に出店することは、ホームページを作ることとほぼ同じだと思います。同時に「出店して終わり」ではもったいないので、各出店者がそれぞれもっと情報発信したり、今回のようなオリジナルのツールを作るなど、通販の可能性を広げる取り組みをして行けると良いと思います。そして、それぞれの出店者が「新潟直送計画」をフルに活用していくことで、「新潟直送計画」そのものの知名度がさらに上がり、それがまた出店者のメリットにもつながるはず。オール新潟で、みんなで一緒に有名になっていきましょう!
SHOKURO様の出品商品
株式会社クーネルワーク 制作実績
https://cunelwork.co.jp/works/17301/