新潟市中央区の堀川鮮魚は、1930年に新潟市の古町・本町通り商店街で鮮魚店として創業。料亭やホテルの卸から一般消費者への小売まで幅広く行い、「新潟市民の台所」として親しまれてきました。
1980年頃になると、業界内でいち早く「加工部」を新設。「市場で仕入れた海産物を新鮮なまま消費者に届けること」をモットーに掲げ、加工品の販売も手がけるようになります。近年、力を注いでいるのは、3D凍結機を活用した商品開発。3D凍結とは、高湿度冷気で全方位から均一に包み込む技術のこと。食品の水分を奪うことなく、鮮魚の美味しさを保ったまま急速冷凍できます。
新潟直送計画では、3D凍結をした「佐渡産 大南蛮エビ」やカット海産物「ゴロリと佐渡海の幸」を出品。「鮮度が抜群」「旨味がたっぷり」と人気を集めています。
今回は、堀川鮮魚のロゴデザインからオリジナル商品「魚河岸膳」シリーズのブランディングまで、トータルでサポートさせていただきました。代表取締役の堀川留美子さんと販促担当の山田克仁さんにインタビュー。商品開発やデザイン依頼のエピソードを伺います。
代表取締役 堀川留美子 様(左)
新潟市出身。1983年に、夫の明彦さんが社長を務める堀川鮮魚に入社した。創業の地・本町店のほか、新潟市中央卸売市場の鮮魚売場・物流センター・加工センターの経営を夫婦で切り盛りしている。魚が大好きという堀川さんのいちおしは、春が旬のサクラマス。「素焼きにして塩も何も付けないで食べるのが好き。マス本来の旨味と脂が美味しいです」と、笑顔を見せた。
本町営業所 課長代理 山田克仁 様(右)
五泉市出身。もともと釣りが好きだった山田さんは、堀川鮮魚に就職するために新潟市に移住。入社当時は営業事務を務めていた。現在は、販促を中心にした会社の業務全般を担当している。「やりがいを感じるのは、魚が売れた時です。お客さんに魚の魅力が伝わって、納得して買ってもらえたら嬉しいですね」と、語る。
担当スタッフ
■デザイナー:大津裕子
■アカウントプランナー:水澤純
出店店舗の魅力を引き出してくれる産直サイト。小さな魚屋でも戦えそう!と希望の光が見えました
ー 新潟直送計画への出店や、ブランディング依頼の経緯を教えてください
山田(堀川鮮魚):もともと無料のネット通販をやっていたんですよ。やってはみたものの、写真撮影からページ作成やアップまですべて自分たちで作業しないといけなくて大変でした。
堀川(堀川鮮魚):日々の業務をこなす中で、なかなかサイトの管理まで手が回らなかったんです。
山田:全国的に見れば知名度のない魚屋です。自分たちの力だけで売っていくのは、集客面でも弱いという課題もありました。そんな時に新潟の産品に特化した産直サイト「新潟直送計画」を知ったんです。第三者目線で独自取材をしてくれるし、商品紹介以外にも店舗の紹介もしてくれますよね。小さな魚屋でも戦えそうだな!と希望の光が見えました。
水澤(プランナー):お声がけいただいて、私が伺いました。「聞けば聞くほど売りがある」というのが堀川鮮魚の第一印象。特に、鮮度を保ったまま加工できる「3D凍結」は強みだなと感じましたね。まずは、「佐渡産 大南蛮エビ」と「トラウトサーモンの焼漬け」を出品していただきました。
堀川:スタッフの方が工場まで取材してくださって、素敵なページに仕上がりました。改めてありがとうございます。おかげさまで好評いただいています。
水澤:レビューもたくさん届いていますよね。ご丁寧に返信してくださって、ありがとうございます。
山田:最初に出品した2商品が軌道に乗ってきたところで、新商品の開発を一緒にしてほしくて、ブランディングの依頼をさせていただきました。
地元民に親しまれてきた「鯛」のシンボルが残りつつ、新しさも感じるパッケージになりました
ー 新商品やパッケージデザインが決まるまでのエピソードを教えてください
堀川:弊社には「甘海老塩麹漬け」や「サーモンの味噌漬け」といった自社オリジナルの商品がたくさんあったんですが、どれも切り身で骨があるものが多かったんです。新たな商材を社員みんなで探っていました。
水澤:近年は夫婦共働きの家庭が増えてきましたよね。そこで、忙しいお父さんやお母さんに嬉しい「骨なしの一口大サイズの海産物」を提案しました。
山田:手軽に調理できますし、魚の骨が苦手で口の小さなお子さんにも訴求できそうだなと思いました。
堀川:話し合いを重ねる中で「キューブ型のカット海産物にしよう!」という案が出て、「ゴロリと佐渡海の幸」が完成しました。佐渡沖で水揚げされた海産物を骨抜き処理して、調理しやすいサイズにカット。3D凍結で冷凍しています。
山田:「ゴロリと佐渡海の幸」を含め、オリジナル商品を包括するブランド名もお願いしたんです。
大津(デザイナー):堀川鮮魚の歴史や商品についてヒアリングして、いくつか案を出させていただきました。
山田:いろいろと案があった中、「魚河岸膳」に決めました。非常に気に入っています(笑)
大津:昔ながらの市場を意味する「魚河岸」と食べ物の「膳」を組み合わせました。地元に根付いた堀川鮮魚らしいネーミングだと思います!
水澤:その流れで、企業ロゴや紙袋、パッケージのラベルデザインも依頼いただきました。
堀川:今までは山田がシールなどを作っていたんですが、統一感がなかったんです。どの商品を見ても「堀川鮮魚の魚」であることを伝えたいなと思って、トータルデザインをお願いしました。
山田:紙袋にいたっては、市販の無地の物を使っていましたからね。お盆や年末年始、帰省中のお客さんが来てくださることが多いんですが、社名も何も入っていない紙袋だと宣伝効果がないんですよ。販促に力を入れるために、紙袋のデザインも必要だなと感じました。
大津:販促の場面では、堀川鮮魚を象徴するマークとして「鯛」を使うことが多いとお聞きしたので、今回も鯛を入れてみました!この紙袋を持っていたら、「新潟に行ったんだな」とわかるようなアイコンになってほしいです。
水澤:そういえば、お店の看板にも大きな鯛が泳いでいますよね!
堀川:嬉しかったです。商店街のシンボルなので、社員一同、「鯛は外せないでしょ!」って話していたんです。そしたら、大津さんがバッチリ使ってくださいました(笑)
堀川:今だから言えるんですが、ロゴやブランド名を統一することに抵抗がありました。
山田:そうそう。デザイン自体は大満足でした。でも、「本当にコレをずっと背負っていくで良いのかな?」という不安があったんですよね。
水澤:では、大きな決断を下したわけですね。
山田:はい、デザイナーさんが、客観的に堀川鮮魚を見て考えてくださったわけですから、信頼してみよう!って。
堀川:何より鯛が入っていたので、「この鯛で勝負しよう!」と、覚悟を決めました。結果、お客さんからの反応も良かったので、ブランディングしていただいて正解でした。
大津:それを聞いてホッとしました。ありがとうございます。
ギフト目的でお買い求めいただくお客さんが増えました!デザインの力を感じましたね
ー デザインを一新して反響はありましたか?
水澤:新しいパッケージはお店にも並んでいますよね。
山田:はい。お客さんから「きれいだね」と言われることがあります。気づいてくれるんだ!って驚きです。
堀川:お客さんのほとんどが地元民だから、ちょっとした変化でも気づいてくれるのかもしれません。
水澤:「きれいだね」って素敵な褒め言葉ですね。リピーターは、我々が思っている以上に見ているんですよ。
山田:今までは、ただの食材としてしか見られていませんでした。「今晩のおかず」みたいな感じ。だけど、デザインが変わってからはギフト目的に購入される方が増えたんです。ラベル一つで「商品」として見られるようになりました。「デザインの力で食材が、商品に生まれ変わる瞬間」を垣間見ましたね。
水澤:お客さんの目線が変わったんだと思います。今までは「食材を買いに行く場所」だった堀川鮮魚が、「ギフトにも使える場所」になったんでしょうね。
堀川:あと、今回、ブランドサイトも作っていただきました。サイトを見てくださった観光施設の方から、「『ゴロリと佐渡海の幸』の調理済み版があっても良いね」という意見をいただいたんですよ。
山田:それがきっかけで、新商品の開発も進行中です。
水澤:すごい!観光施設に調理済み商品が置いてあったら、帰りの新幹線のお酒のおつまみとして買うお客さんもいるかもしれませんね。
山田:そうですね。これからも「魚河岸膳」を引っ提げて、魅力的な商品を作っていきたいです。
水澤:楽しみですね!最後にお聞きしたいのですが、堀川鮮魚にとって新潟直送計画はどんな存在でしょうか?
山田:ビジネスライクではなく、人と人との繋がりを大事にしてくれる印象。ちゃんとダメ出しもしてくれるのが嬉しい(笑)内部の人間だと気づかないこともあるので、「それじゃ売れないと思います」って、ズバッと言ってくださるのは助かりますね。
水澤:お力になれて何よりです。
山田:新潟直送計画は、自社で何でもやれる企業よりは、悩みを抱えている小さな企業にとって心強い存在なんだなと感じました。助け舟のような存在ですね。
水澤:励みになるお言葉、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!